アイツの溺愛には敵わない

また突然触れられることのないように気を付けて食べなくちゃ。


いつもよりも上品に……を意識して次々と買ってきたパンを口に運ぶ。


少し多めに購入したつもりだったけど、お腹が空いていたのとパンが美味しかったこともあって、私も颯己もペロリとたいらげてしまった。


「はーちゃんのおかげで美味しいパンを食べることが出来て大満足。ありがとう」


「実はね、このお店の情報を私に教えてくれたのは綾芽ちゃんなんだ。週明けにお礼を言わなきゃ」


「ふーん」


素っ気ない返事をしながら、家から持ってきたコーヒーの入っているタンブラーに口をつける颯己。


そう言えば、あのこと……。


まだ本人には聞いてなかったな。


「ねぇ、颯己」


「ん?」


「昼食の時、どうして綾芽ちゃんに不機嫌そうな視線を向けてたの?」


「それ、碓井さんから聞いた?」


コクンと頷く。


颯己は気まずそうに私をチラチラと見ながらコーヒーを一口飲んだ。


「……イヤだったから」


「えっ?」


「はーちゃんが俺以外のヤツと一緒に楽しそうにご飯食べてるのがイヤでたまらなかったんだよ」


それは、つまり……。


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