アイツの溺愛には敵わない
「どうしたの?」
「木漏れ日がキレイ。はーちゃんも寝転がってみなよ」
颯己は手をかざしながら空を見つめる。
座ったまま見上げればいいような気もするけど、颯己がそう言うなら……。
タンブラーをバッグにしまってから、ゆっくりとその場に寝転んだ。
「わぁ、本当だ。キラキラして綺麗」
少し紅葉が始まった葉が風に揺られて、隙間から太陽の光が零れ落ちる。
その奥には透き通った青空。
癒される景色だなぁ。
ボンヤリと眺めていると、颯己は空にかざしていた手を降ろして私の手を包み込むように握った。
「小学生の時、はーちゃんとこの公園でこんな風に桜を見たことがあったよね」
「遊具のエリアにある大きな桜の木の下」
「そうそう。芝生の上に直接寝転んでお花見した」
「桜の花が満開に咲き誇っていて圧巻だったなぁ」
「そうだね」
小さいながらも凄く感動したのを覚えている。
私も颯己もお喋りするのを忘れて、桜に見惚れていたっけ。
あの頃の光景が蘇ってきて、懐かしさで胸の奥が滲んだ。