アイツの溺愛には敵わない

「また、はーちゃんとお花見したいな。来年の春になったら、この公園に来ようね」


「うん」


柔らかい笑みを浮かべる颯己。


そのまま、二人で見つめ合う。


少し触れるぐらいだったお互いの肩がピタリと密着して。


視界に映る颯己の顔が徐々に私の方に近付いてくる。


もしかして……。


私は空いている手で慌てて口を覆った。


「はーちゃん、何してるの?」


「今、キスしようとしたでしょ?」


「正解。よく分かったね」


不満そうな表情を浮かべるのかと思ったけど、意外にも楽しそうな笑顔だ。


「このエリアもちらほらと人がいるんだし、見られたら恥ずかしいからキスはダメ」


池の周囲は遊歩道があるから、いきなり近くを誰かが通りかかる可能性だってある。


さすがに今回も特別……というわけにはいかない。


「了解」


良かった。


意外と素直に聞き入れてくれて。


胸を撫で下ろしていると、颯己は上半身を少しだけ起こして私のバッグを指差した。

< 177 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop