アイツの溺愛には敵わない
「また、はーちゃんとお花見したいな。来年の春になったら、この公園に来ようね」
「うん」
柔らかい笑みを浮かべる颯己。
そのまま、二人で見つめ合う。
少し触れるぐらいだったお互いの肩がピタリと密着して。
視界に映る颯己の顔が徐々に私の方に近付いてくる。
もしかして……。
私は空いている手で慌てて口を覆った。
「はーちゃん、何してるの?」
「今、キスしようとしたでしょ?」
「正解。よく分かったね」
不満そうな表情を浮かべるのかと思ったけど、意外にも楽しそうな笑顔だ。
「このエリアもちらほらと人がいるんだし、見られたら恥ずかしいからキスはダメ」
池の周囲は遊歩道があるから、いきなり近くを誰かが通りかかる可能性だってある。
さすがに今回も特別……というわけにはいかない。
「了解」
良かった。
意外と素直に聞き入れてくれて。
胸を撫で下ろしていると、颯己は上半身を少しだけ起こして私のバッグを指差した。