アイツの溺愛には敵わない

「そう言えば、パン屋で会計してる時に店員さんからチラシ貰ってたよね。あれ、俺に見せて?」


そうだ、後で見ようと思って忘れてた。


新作パンとか、おすすめの食べ方とか書いてあるって言ってたっけ。


颯己、あの時は興味なさそうだったけど気分が変わって見たくなったのかな?


「ちょっと待ってね」


繋いでいた手をほどいて、寝転んだままバッグの中から折りたたんでしまってあったチラシを取り出す。


「はい、これ……」


用紙をひらいて手渡した瞬間。


あっという間に颯己の顔が私に近付いてきて唇を奪われた。


「チラシで隠せば、人目も気にならないでしょ」


もしかして、さっきキスを阻止した時に不満げじゃなかったのも、チラシが見たいって言ったのも、このため…?


「かっ、隠しても同じだよ!もう、心臓が止まるかと思ったじゃない」


口を尖らせると、颯己は頬杖をつきながら嬉しそうに目を細めた。


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