アイツの溺愛には敵わない
ヤバい。
緊張がピークに達しようとしてる。
落ち着こうと頑張れば頑張るほど、鼓動は反比例して加速していく一方だ。
「はーちゃん、どうしたの?」
その声にハッとなって視線を落とすと、颯己の手を力いっぱい握っていることに気付いた。
「痛かったよね。ご、ごめん」
「全然平気。それより、なんだか顔が青白い気がするけど大丈夫?」
「うん」
颯己は、心配そうな表情を浮かべながら私のおでこに手をあてた。
「熱はなさそう。公園を散策して少し疲れたのかもしれないね。俺が晩ご飯の準備するから、暫くはーちゃんは部屋で休んでて?」
「でも……」
「こういう時は休むに限るよ。無理は禁物」
頭を撫でる颯己に小さく頷いた私は、自分の部屋に入る。
着替えを済ませると、ベッドの縁に腰をおろした。
緊張しすぎて血の気が引いてたのかな。
颯己に余計な心配をさせてしまった。
あとで、事情をちゃんと話さなきゃ。
でも、あのままだとドキドキし過ぎて正常な動作や受け答えすら出来なくなってた気がするから、ちょうど良かったのかもしれない。
とりあえず心を静めよう。
傍にあったクッションを抱きしめてゆっくりと呼吸を繰り返した。