MATSUのごくありふれた平凡な日々
嵐のような雰囲気も、社外取締役の一人が、取締役社長に就任し、一応は落ち着きを見せ始めていた。
暁は営業部で、美紀も秘書室で、そのまま働いている。
美紀とは飲みに行った。
酒が入らないと、言いづらいし、聞きづらかったからだ。
「ああ、まあ、暁にそう言われたのは事実ね。
ずいぶん省略されているけど」
美紀はあっさりと認めながら、黒い笑いを浮かべた。
「誰か誑し込めと言われたけど、だったら、あんたが女子社員を誑し込みなさいよ、と言い返したのよね。
そんなことしなくたって、経理部のセキュリティーなんてザルじゃない。
監視カメラだってあるわけじゃないし。
あんたが利用しやすそうと思っていたのは、暁であって、私の考えじゃないわ。
暁に言われた時の事、よく思い出してみなさいよ」
松は一口飲んでから、頭を抱え込む。
「・・・だめだ、思い出せない」
美紀はため息をついた。