綾川くんが君臨する

「なにやってんの黒鐘」


落ちてきた無機質な声に、わたしはおそるおそる顔を上げた。

……いや、なんでいるの。


「見てのとおり転んだ……の」

「スマホばっか見てるからだろ」


そう言いながら綾川くんが屈み込む。

わたしを助けるために……ではなく、転んだ拍子にわたしの手から逃げていったスマホを、拾い上げようとして。


「やっ、だめ!! 見ちゃだめ……っ!!」


つい大きな声を出してしまって、はっとする。

でも、だって……綾川くんとのトーク画面を開きっぱなしにしてたから。

それで注意散漫になって転びました、なんて、本人に知られるわけにはいかない。


ズキズキと痛む膝を押さえながらなんとか立ち上がって、自分のスマホを掴んだ。


「まーたいかがわしいもの見てたんだ」

「またって……そんなの見たことないから」

「じゃあなに、男?」

「ち……、違……う」


次の瞬間、綾川くんは眉をひそめた。

なにか言いたげに口を開いたかと思えば、結局そのまま押し黙る。
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