綾川くんが君臨する

「オレが? 全然いいよ。黒鐘さんくらいなら軽く担げるし」


風間くんの爽やかな笑顔がさく裂した瞬間、まだ教室に残っていた人たちの意識がわたしたちに集まったのがわかった。


男の子たちからは、からかいの声。女の子たちからは、トゲのような視線。

ていうか風間くん今、『担げるし』とか言わなかった?

か、担ぐの……? さすがに冗談だよね……?



「じゃあ黒鐘さん行こっか。立てる?」

「えっ」


ナチュラルに差し出された手のひらと、風間くんの顔とを交互に見つめる。

どうやら本気で病院まで付き添おうとしてくれているらしい。


たかがクラスメイトのために、貴重な放課後の時間を投げ売ってくれる。

こんな聖人君子のような男の子が他にいるだろうか。いやいない。

だからこそ、甘えちゃいけないと思う。

わたしも断れないタイプだからわかる。

たとえ無理をしてても、頼まれたら笑顔で「いいよ」って言っちゃう。
そういう人には、誰かがブレーキになってあげないといけないんだ。
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