急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「親父や兄貴にきつく言われて、嫌々あの女と行った新婚旅行から帰ってみれば、亜里砂は俺のことなんてどうでもよかったみたいに、ケロッとした顔で、普通に出勤して仕事をしていたよな。俺の気も知らないで…。
俺は新婚旅行のあいだ、君が俺をあの女に奪われ、どんなにショックを受けているかと思って、眠れやしなかったというのに。
君は少しも俺を惜しむ素振りを見せなかった。俺なんか知らないという顔をして…。本当に薄情な女だ。あの時は本当に腹が立ったよ。
いつだって俺だけが、君の事を想って悶々とさせられているんだ」

(そうか…そんなことになっていたのね…。って、いやいや、色々おかしいでしょ!
なんで私が振った体になってるの⁉︎)

「君の気を引くために、あの女に君の服を着せたり、君と同じ髪型や化粧をさせてみても、怒って荷物を取り返しに来るでも無く、亜里砂はまるきり無視だったしさ…」

「!」

(キモッ!そりゃそうでしょ!あなた荷物は全部捨てたって私に言ったじゃない!誰が取り返しに行くか!気持ち悪くて関わりたくなかったわ!)

池澤の責めるような声に、亜里砂の全身が鳥肌立った。
池澤は口を尖らせて、更に拗ねたように言う。

「しかもあの女…そもそも妊娠なんて最初からしていなかったのに、嘘をついていたんだ。
だと思ったよ。一夜限りの遊びだぜ。俺がそんなヘマをするかっていうの。
あの女、嘘が俺に完全にバレた時も、もう籍を入れてしまったんだから、別れるわけにはいかないだろうと開き直りやがって…。そんな嘘をついてまでも俺が欲しかったんだって泣き喚いたんだ。
それを聞いた時には、本当に殺してやろうかと思ったね。
俺が欲しかったのは…結婚したかったのは亜里砂だけだったのに!
だから俺、泣いてるアイツを殴って…『俺はお前なんか要らない。俺が欲しいのは亜里砂だけだ。そんなに俺のことを好きなら、さっさと俺の前から消えてくれないか?なんなら死んでくれよ。本当にウザい、目障りだ』って言ってやったんだぜ」

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