麗しの彼は、妻に恋をする
これからも節約は続くので、買い換えるなんて勿体ないことはできない。
「柚希ちゃんがいなくなると、なんだか寂しいね」
「何年かしたら戻ってきますね」
――そうだ。何年かしたら、戻ってこよう。
そう思えば少しは気持ちが楽になった。
「それじゃ、お世話になりました」
「気をつけてね」
手伝いに来てくれたお隣りのおじいちゃんとおばあちゃんが手を降ってくれる。
愛車の助手席にはおばあちゃんが握ってくれたおにぎりと、おじいちゃんが作った野菜の数々。
「また、遊びにきますから!」
「待ってるよ」
走り出して間もなくスマートホンが鳴っていることに気づいた。
ちらりと見ると、表示されているのは『派手女』赤い車の雫ジルだ。
思わず嫌そうに眉がピクリと動く。
運転中だし、もう家を出たのだから急ぎの用事などないはずである。
和葵からかかってきても違う意味で困るので、柚希は手を伸ばし、スマートホンの電源を落とした。
一方、電話をかけた雫ジルは、イライラとスマートホンをテーブルの上に投げ出した。
「どうして出ないのよっ!」
「柚希ちゃんがいなくなると、なんだか寂しいね」
「何年かしたら戻ってきますね」
――そうだ。何年かしたら、戻ってこよう。
そう思えば少しは気持ちが楽になった。
「それじゃ、お世話になりました」
「気をつけてね」
手伝いに来てくれたお隣りのおじいちゃんとおばあちゃんが手を降ってくれる。
愛車の助手席にはおばあちゃんが握ってくれたおにぎりと、おじいちゃんが作った野菜の数々。
「また、遊びにきますから!」
「待ってるよ」
走り出して間もなくスマートホンが鳴っていることに気づいた。
ちらりと見ると、表示されているのは『派手女』赤い車の雫ジルだ。
思わず嫌そうに眉がピクリと動く。
運転中だし、もう家を出たのだから急ぎの用事などないはずである。
和葵からかかってきても違う意味で困るので、柚希は手を伸ばし、スマートホンの電源を落とした。
一方、電話をかけた雫ジルは、イライラとスマートホンをテーブルの上に投げ出した。
「どうして出ないのよっ!」