北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
-Heater Before Christmas-
 コタツは魔物だ。
 囚われたら最後、容易に抜け出せなくなる。
 ローソファの座面を枕にコタツで寝ている累を見下ろして、凛乃は溜息をついた。
 年末進行とやらのせいで、累の仕事時間が伸びている。
 それと前後してコタツを始めたのが失敗だった。
 累がノートパソコンをリビングに持ってきたことにより、仕事とそれ以外の区切りが曖昧になってしまった。
 実際忙しいのも相まって、ふたりでテレビやDVDを見たりジャレあって過ごしていた時間は侵食され、凛乃は仕事のジャマをしないよう寝室で過ごすことが増えた。
 そして怖れていたとおり、ついに累はコタツで一夜を過ごしたらしい。
 のんきな寝顔に、ちょっとイラっと来た。
 パジャマ姿のこっちは眉間にシワを刻んで目覚めたのに、昨日の服のままの累は穏やかな寝息を立てている。
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