北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「でも、こんな状態で……」
 なおも渋る凛乃を見て、申し訳なさに襲われる。
「ごめん、やっぱりいきなりすぎた。断る」
 踵を返した累のカーディガンの裾が、びよんとひっぱられた。
「ねえ」
 カーディガンが伸びないように、凛乃が一歩、寄ってくる。
「つるにこは連れて行くの?」
 腕のなかでしきりにごろごろ喉を鳴らしているつるにこを見下ろして、累はうなずいた。
「猫がいるってわかれば少し気が済むだろうし」
「どういうこと?」
「ひとりでさみしいならフランスに来いって心配されたから」
 凛乃の眉が、きゅっと上がった。
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