北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「3、いや、1分待って」
 言うなり、寝室へ駆け込んでいく。
 どたばたと動き回る音がして、出てきたときには真っ白なリクルートシャツとデニムに着替えていた。口唇もほんのり濡れたようなピンク色になり、表情がきりっとしている。
「これ、レフ板効果ね」
 襟を整えながらそう言う凛乃は、真冬の廊下では寒そうに見えた。
「だいじょうぶ? イヤなら……」
 暖かい部屋の中に促しながら、小声で言う。
「イヤじゃないけど、緊張する」
 こわばる頬に指の背を滑らせると、凛乃は目を閉じて深呼吸した。
 累は部屋の入り口に凛乃を待たせておいて、期待をみなぎらせた言造が待ちかまえているモニターの前を、わざと横切った。
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