北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「えっとわたし、エンゲージはつける期間が短いから、マリッジだけでいいかなーって思ってたんだ。お返しもほら、ネクタイピンとかカフスボタンはこだわりないし、時計もつけないひとでしょ? お互いに浮いた分、リフォームに回したらいいんじゃないかな、とか」
 そこまで考えていたのか、と驚くと同時に、意気込みが一歩後退するような眩暈がする。
 必要なものらしいと知ったから誕生石まで調べたけど、凛乃がそれを求めてないなら意味がない。
「あ、でも累さんがエンゲージ必要だって思うならもちろん」
「ううん、そういうわけじゃないんだけど」
 知ってるつもり、わかってるつもりになっちゃダメだ。いままで何度も経験したはずだ。
「すいません、ちょっと、話してきます」
 気持ちを立て直して、累は回転イスをおりる。
 ふたりを交互に見ていた販売員が、励ますように熱意を込めて頭を下げた。
「お待ちしております」
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