北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「家政婦は仕事であって凛乃じゃないから」
 フォローなのか叱咤なのか、累が凛乃の頬をむにっとつまんだ。
 凛乃はその絶妙な力加減を感じながら、深くうなずいた。
「いまあるアレ、使い切ったら変えます。1ダースを空にした成果として変わります」
「いいね」
「あ、できれば」
 ベッドから離れようとした累に、凛乃は追加した。
「今日中に使い切れたらな、と」
 顔から火を吹きそうだったけど、偽らざる本音にまたひとつ、見えない壁が崩れた。



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