北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「振袖はダメ?」
「ダメじゃないけど、若い子が着るものってイメージだし」
「独身かどうかじゃなかった?」
「独身、では、あるんだけど、だから、レンタルとかただの振袖なら思い切って着ちゃえ、ってなるけど、ね」
歯切れの悪い凛乃の顔を見ても、渋る理由がよくわからない。
その表情が伝わったのか、凛乃は「つまりね」とつないだ。
「累さんのお母さんの着物なわけですよ。意味合いがね。一式揃ってるのって、そのうち身内の誰かが着ないかなーと思ったからだと思うんですよ。お母さん、よそもののわたしが着るの、許してくれるかなあって」
説明に、ひさしぶりの敬語が混ざった。
無性にキスしたいような気になったけれど、ひとの車のなかだという意識に、思いとどまった。
「ダメじゃないけど、若い子が着るものってイメージだし」
「独身かどうかじゃなかった?」
「独身、では、あるんだけど、だから、レンタルとかただの振袖なら思い切って着ちゃえ、ってなるけど、ね」
歯切れの悪い凛乃の顔を見ても、渋る理由がよくわからない。
その表情が伝わったのか、凛乃は「つまりね」とつないだ。
「累さんのお母さんの着物なわけですよ。意味合いがね。一式揃ってるのって、そのうち身内の誰かが着ないかなーと思ったからだと思うんですよ。お母さん、よそもののわたしが着るの、許してくれるかなあって」
説明に、ひさしぶりの敬語が混ざった。
無性にキスしたいような気になったけれど、ひとの車のなかだという意識に、思いとどまった。