独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

「！？」

「邪魔、手が洗えないわ。どいて」

噂の張本人、梨々香の登場に女性社員たちはヒッと息を呑む。
梨々香は優雅な笑みを浮かべながら手を洗い、チラリと鏡越しに女性たちを見る。

「あんたたちみたいな不細工が化粧直したって、なんも変わんないわよ。早く仕事に戻ったら？」

「……っ！！」

梨々香は顔を真っ赤にする女性社員にニッコリと笑みを浮かべて、その横を通り過ぎていく。

「あの女……ホント性格悪い」

「コネ入社の無能のくせに」

梨々香の父親は『須和第一不動産』と古くから密接な関係のある、建築会社『羽柴コーポレーション』の社長だ。梨々香は一人娘で大金持ちの社長令嬢ということになる。

父親同士が仕事でよく会っていたのだから、須和とは幼いころからの仲ではあった。

須和に恋心を抱いた梨々香は社会人になり、自分の家の会社に入るのではなく、須和の会社に入ってしまった。もちろん裏口入社だ。

（絶対に許さない……柾。女ってこの前の和菓子屋の娘……？）