エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 どうしてそんなひどいことを言うの。

 私は、そんな言葉をかけてほしかったわけじゃない。

 貴利くんならわかってくれると思った。人の命と向き合う医者だから、大切な人を亡くした私の気持ちを理解してくれると思った。それなのに、あの言葉はあまりにもひどい。

 あの日。傷付いた心をさらに傷付けられて、私がどれほど悲しい思いをしたのか。

 辛くて悲しくて寂しくて苦しい。そんな私の気持ちを貴利くんは受け止めてくれなかった。むしろ突き放されてしまった。

 貴利くんは寡黙で無愛想だけど、本当は優しい人だと思っていた 。

 理数系が苦手な私のために自分も医学部の勉強が忙しいのにテスト勉強に付き合ってくれたり、図書館の棚の一番高いところにある本を私の代わりに取ってくれたり。

 見た目も怖いし性格も不器用。だけど本当は優しい。そう思っていたのに……。

 あの日から私は貴利くんに抱く感情が変わってしまった。


『いいか、千菜――』


 そのあとも貴利くんは私に向かって何かを話していた気がする。でも、貴利くんに対してすっかり心を閉ざしてしまった私にはもう彼のどんな言葉も届かなかった――

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