エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
「玉蔵さんはどうした?」
本当なら今日、貴利くんは玉蔵と会う約束をしていた。それなのに私がいるから不思議に思っているのだろう。
「代わりに私が来た。私、貴利くんとしっかり話がしたい」
そう告げた私に貴利くんは「そうか」と静かに頷いた。そして、無表情のまま私に近づいてくる。
相変わらず貴利くんの無表情はちょっとこわい。約束と違って私が来たから怒っているのだろうか。感情が読めない。
貴利くんはゆっくりとした足取りで私のすぐ目の前まで来た。そして、片手で私をそっと抱き寄せる。
「待たせてごめん。寒かっただろ」
その瞬間、じわっと瞳に涙が浮かんだ。
この場所で待ち続けた私の身体はすっかり冷えきっているのに、病院からいつもみたいに自転車を走らせてきた貴利くんの身体はなんだかぽかぽかとしていて暖かい。
その熱をもっとわけてほしくて、私は貴利くんの背中に腕をまわすとしがみつくように抱きついた。
「寒かったよ。どうして貴利くんはいつも時間に遅れてくるの」
「すまん。急患が入った」
「いつもそれだよ」
仕方ないってわかっている。でも私は、貴利くんに再会した日からずっと彼には待たされてばかりだし、デートだって途中で帰っちゃうし。
それでも私は貴利くんが好きなんだ……。