エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 突然、俺のために千菜との結婚を取り付けてきたのはそのせいかと確信した。

 でも、俺は別に千菜に恋愛感情を持っているわけではなかった。

 千菜のことは子供の頃から知っているんだ。歳だって八つも離れている。恋愛感情なんて持つはずがない。
 
 そう思っていたが、本当にそうだろうかとふと考えてしまった。俺は、あらためて自分の気持ちを考えてみた。
 
 祖母の死を悲しんで泣いている千菜を見て胸が痛んだ。幼い頃から知っている、いわば妹のような存在の千菜の泣いている姿が痛々しくて、気が付くと自分にできることを必死に探していた。

 その結果、脳外科医になる道を選び、そうすることが千菜のためになると思った。



『相手のために何かをしたいと思う。それはもう恋……いや、愛なんだぞ、貴利』



 そんな父親の言葉で気が付いた。

 どうやら自分でも気が付かないうちに、俺の中で千菜は大切な存在になっていたらしい。

 そして、俺は千菜との結婚を決めた。

 でも、どうやら千菜は俺のことが嫌いらしい。六年振りに再会したときにはっきりとそう告げられてしまった。

 なぜだ。俺がいったい千菜に何をしたというんだ。まったく思い当たる節がない。

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