エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 そちらに顔を向けると、パンツスタイルの白衣を着た女性がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

 俺と同じ脳外科病棟の麻宮(あさみや)さんという女性看護師で、はっきりとした年齢は知らないが俺よりも年下、たぶん二十代後半だろうか。


「こんなところでまた三雲先生と休憩ですか。高松(たかまつ)先生が探されていましたよ」

「高松先生が?」

「明日のオペのことで確認したいことがあるそうです」

「そうか」


 高松先生は港町総合病院の脳神経外科で部長を務めている俺の上司だ。その先生が俺を探しているのだから早く戻らなければ。

 飲みかけの缶コーヒーを急いで飲み干していると、三雲の視線を感じた。


「郡司、明日オペ入ってんの? 確かお前、おとといが当直で昨日は日勤。今日だって休みなのに呼び出しで出勤してこのまま当直。で、明日はオペ。ハードだな」

「問題ない。いつものことだ。それに、仮眠は取れる」


 医者である祖父と両親がプライベートを後回しにして患者を診ている姿を幼い頃から近くで見てきた。

 実際に俺も同じ職についてみると、連日の泊まり込みは当たり前だし、定時で帰れることなんてほとんどない。

 自宅に戻れても呼び出しの当番日になっていると、患者の容体の急変や緊急オペが入れば深夜や未明でもすぐに連絡がくる。

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