エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~

『ママから聞いたんだ。千菜が恋人に振られて落ち込んでいるから、このままだと男性不信になりそうだって』


 ……男性不信とは大げさだと思う。

 玉蔵の言葉を聞いてキッチンに視線を投げれば、こんな夜遅い時間に趣味であるお菓子作りに勤しんでいる母親と目が合う。こねこねと生地を練りながら、マイペースな彼女はにこりと私に笑いかける。


『ママは千菜ちゃんが心配だったのよ。たけるくんと絶対に結婚するって言っていたのに振られちゃうから。たけるくんからもらった指輪を握りしめて何日もずっと泣いていたでしょ。ママこっそり部屋を覗いてはいつも見守っていたのよ』

『ママ……お願いだから勝手に人の部屋を覗かないで。それと、いつも言っているけど、たけるじゃなくてかけるだから』

『そうそう。かけるくんだったわね。あらやだ、ママったらまた間違えちゃった』


 こねこねしていた生地を今度はバンバンと叩きつけながら母親はケラケラと笑っている。

 別れた今となっては元彼の名前がたけるでもかけるでももう二度と彼の名前を呼ぶことはないからどうでもいいんだけど……というか、思い出したら涙でそうでやばい。

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