エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 図書館の本は市民のお金で買った市の備品だ。貸出し中に利用者の方が汚してしまったり破損させてしまったりすると弁償になってしまう。

 その方法も現金を受け取ることはできなくて、書店やネットなどで同じ本を購入して持って来てもらうようになっている。


「それで、そのあとどうなったんですか?」

「私だけじゃ対応できないから副館長呼んだ。そしたらその男が急に大人しくなって、素直に弁償手続きに応じてくれた。同じ本を買って今度持って来るって」

「そうですか。お疲れ様です」

「うん。マジで疲れた」


 小谷さんは私の隣の椅子を引くとそこに勢いよく腰を下ろした。

 弁償手続きに相当な神経を使ったのだろう。小谷さんはテーブルに顔を突っ伏した状態でしばらくぐったりとしていたけれど、少しすると顔をむくっと持ち上げた。


「そういえば、中澤さん無事でよかったよね。昨日は本当に焦ったよ」


 春子さんが倒れたときにそばにいたのも、救急車を呼んでくれたのも小谷さんだ。

 あのとき私は春子さんにとっさに駆け寄ったものの、祖母の姿を重ねてしまい動けなくなってしまったから。

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