別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「湊斗のことを抱きしめてもいいか?」

「はい」

渚さんが湊斗に向かって手を伸ばす。優しく頭を撫でるとスッと自分の胸へと引き寄せた。

「迎えにくるのが遅くなってごめんな」

「大丈夫だよ。パパの代わりにママのこと守ってきたから」

「そうか。ありがとう。湊斗は優しくて強い男の子だな」

「うん。パパは泣き虫だね。ぼくが守ってあげるよ」

小さな手で渚さんの頭をよしよしと撫でる湊斗を見て、そこにいるみんなが感極まり涙を流していた。

***

「やっぱり親子ね。顔もそっくりだけど、寝相まで一緒なんだから」

客間に敷かれた布団の上でふたり同じ格好をして眠る渚さんと湊斗を見て、母がクスリと笑う。

あれから湊斗は渚さんにべったりだった。たかいたかいをしてもらったり肩車をしてもらったり、ずっと興奮状態だった。

眠くなってもパパと片時も離れたくなくて、ぐずりだした湊斗を見て母が客間に布団を敷き、しばらくふたりっきりにさせておいたのだ。

物音がしなくなり、そっと覗くとふたりとも夢の中だった。渚さんも朝から気を張っていたし、湊斗に振り回されて相当疲れていたに違いない。

「親子三人で幸せになりなさい」

「お母さん……」

「いろいろあってすれ違ってしまってけれど、あなたたちならこの三年を埋めることができると思うわ」

優しく微笑む母に向かって私もニコリと笑いながらコクンと頷いた。
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