別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
不安と憂鬱に心を支配されながら過ごしたそこからの一週間。やっぱり場違いな所に来てしまったのではないかと心は落ち着くことを知らない。普段着慣れないワンピースに身を包めど、心の内までは着飾ることができず、あたふたするばかりだ。

それでもさっき会長夫人には挨拶を済ませたし、今日のミッションは大方クリアというところだろうか。ここは高級ホテルの最上階のフロア。全面ガラス張りの開放的な窓からは、夕焼け空と海のコラボレーションが広がっている。

頭上には煌びやかなシャンデリア。 白とグレー、そしてパステル調の水色を基調とした会場コーデは、きっと会長夫人の趣味だろうと勝手な推測をしながら、シャンパングラス片手に辺りをキョロキョロと見渡す。

招待客は、ざっと五百人は超えているだろうか。中にはテレビで見たことがある著名人や俳優やモデルの顔もちらほらとあって、さすが日本を代表する大企業『星野グループ』の創立記念パーティーだと圧倒されていた。

立食パーティーということで、各テーブルには高級食材を使用した美味しそうな一口料理やスイーツが所狭しと並んでいた。同じ作り手としていろいろと興味をそそられながら、一口二口と摘まんでみると、その美味しさに自然と笑みが零れる。
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