別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
すべてが順風満帆。こんな日がずっと続いてほしいと心から思っていた。そんなある日のこと。

「今度一緒に旅行にでも行かないか?」

「旅行ですか?」

「秋の京都なんて風情があっていいと思わないか?」

その日仕事終わりにレストランの個室で渚さんと夕食を食べていると、ふいにそんなことを言われ、渚さんが鞄から旅行雑誌を取り出して目の前の机に広げた。

秋の京都と言えば紅葉シーズンだ。清水寺や渡月橋などの観光スポットは見ごたえがあるだろう。

十月の結婚式シーズンが過ぎれば仕事もひと段落して休みをもらそうだし、なにより渚さんとまだ旅行に行ったことがないので行ってみたい。

「素敵ですね。ぜひ行ってみたいです」

私の返答を聞いて渚さんが嬉しそうに笑う。美味しい食事をしながら旅行雑誌を見て盛り上がり、その日は話が尽きなかった。

それから話はとんとん拍子に進み、仕事が落ち着く十一月半ばの平日に一緒に京都旅行に行くことになった。

家でも職場でもカレンダーを眺めては旅行までの日を指折り数える日が続いている。幼いころの遠足を待ち遠しくウキウキと心を躍らせていたあの頃の感覚に近いのかもしれない。渚さんとの初めての旅行。どんなワクワクが待っているのだろうか。
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