別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
それでも家に帰り少し冷静になって考えてみると、不思議と戸惑いの感情よりも嬉しさが込み上げてきていることに気が付き、自然とお腹に手が流れる。

それと同時に胸にぽっかりと空いた穴が埋まっていくような気がした。

絶望の中にいた私の中に差し込んだ一筋の光。その希望は再び私を奮い立たせ、私はひとつの決心を固めた。

私は──

この子を産みたい。

すぐに美紅にはそのことを話した。美紅は渚さんに話すべきだと何度も私を諭したが、私はそれを拒否続けた。

渚さんの将来を潰すことはできない。それに妊娠の話がお父さんの耳に入ったらお腹の子を堕ろせと言われるか、子どもを取り上げられるか……そんな不安しかなかったから。

私はひとりで育てる決意を固めた。そのためには産前産後のことを考えると自分ひとりではどうにもできなくて、両親にシングルマザーになることをカミングアウトした。

父は激昂し猛反対した。母は一瞬、動揺を見せたものの私の気持ちを汲んで父を説得してくれ、最終的には父も私の決断を受け入れてくれた。

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