別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
結局、岬オーナーの告白を受け入れることができなくて丁重にお断りをした。

心が落ち着かないまま帰宅して母親と湊斗を寝室のベッドへと運び終えると、風呂に向かった。心音はずっと騒々しい。

岬オーナーに言われた言葉が頭の中を無限ループし続けて、湯船に浸かり悶々と考え事をしていたら、のぼせてしまった。

頭がぼーっとする。身体の火照りを冷まそうと、冷蔵庫から炭酸水を取り出し一口、口に含んだ。

「凛子、ちょっといい?」

ダイニングチェアーに座りながらぼんやりとしていると、母が声を掛けてきて目の前の席へと腰を下ろした。

「湊斗のことなんだけどね」

「やっぱりなんかあったんだね。あんな風に湊斗がなるの初めてだったから、なにかあったんだとは思ってた」

岬オーナーのことだけじゃなく、私の回りは問題山積みだ。

「保育園でね、父の日に向けて絵を描いたんだって。でも湊斗にはお父さんがいないじゃない? だから最初絵を描くことを拒んだらしいの。それでも湊斗なりに考えて、じぃじの絵を描いたようなんだけど、白髪交じりの絵を見てお友達に〝変だ〟って言われて。『パパがいないからじぃじの絵を描いたんだ』ってなにげなく言ったら……」

「言ったら?」

「かわいそうだねって言われて、泣きながらその子のことを押し倒したらしいの」

「そうだったんだ……」
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