蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


side 聡太



永遠さんの計らいで側近の大吾さんに瑛美のアパートまで送ってもらった


俯いたままついてくる瑛美の姿に胸が痛い


『総長が忙しいなんてのは言い訳だ
好きな女一人守れないなら総長も辞めてしまえ』


亜樹さんの声が頭を占めて
後悔ばかりが湧いてくる気分を切り替えるとチャイムを鳴らした


「はーい」


元気よく飛び出してきたのは
瑛美の一番下の弟か


「誰?ん?ねーちゃんじゃん
かーちゃん、ねーちゃんが知らない人と帰ってきた〜」


裸足で玄関を開けたまま
部屋へ向けて大きな声を出せば

「ん〜?」と瑛美によく似た母親が顔を出した


「瑛美?どうしたの?」


自宅に帰ってきたのにチャイムを押したのは知らない俺で

不安気に見上げる母親へ
勢いよく頭を下げた


「すみませんでした」


「・・・へ?」


「ちょ、違うの、お母さん、ね
聡太君が謝ることじゃないでしょっ」


頭を下げたままの俺と
それを直そうとする瑛美と
意味も分からず固まる母親


そこへ


「どうした?」


背後から声がかかった


「お、父さん、瑛美が帰ってきて
この子が謝ってて、その・・・」


テンパったままの母親の声で
父親が仕事から帰ってきたのだと分かった


「とりあえず中で話そう」


冷静な父親の声で
部屋の中へ入れてもらうことになった


小さなテーブルを挟んで
瑛美の両親と向かい合った

隣の部屋に押し込まれた兄妹達が
襖を蹴破りそうな勢いで覗いているのが見えるけれど

どうせなら全員に聞いて貰うつもりで
もう一度大きな声で詫びを入れた


「俺は、東白学園二年の高木聡太と言います
今日は俺の所為で瑛美さんに怪我をさせて・・・」


「違うの、これは聡太君の所為じゃないっ」


説明したいのに瑛美が口を挟む

その様子を見ながら父親が瑛美を制してくれた


「瑛美、とりあえず聡太君の話を聞こう」


そこから

「実は・・・」と
バレンタインでチョコを貰った話に始まり今日までの話をした


「怪我って・・・母さん気づいてなかった」


母親は「ごめんね」と瑛美に声をかけながら泣き出した


「でも聡太君が殴った訳じゃない」


父親は冷静なまま判断をしてくれたけれど


「いや、俺がもっと瑛美さんを気にかけていれば
防げたはずなんです
好きな女一人守れない俺がこの街を守れる訳がない」

悔しさが胸を渦巻いて
力を入れた握り拳を膝に押し付けた


「失礼だけど・・・君は・・・」


「俺は、Nightの総長で、父は白夜会
三ノ組傘下 高木組 組長高木聡紫です」


「「・・・っ」」


瑛美の両親は俺の素性を聞いて
向かい側で目を見開いて固まった












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