蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜
眠たい眠たい病?



暑くて溶けかけた夏休み


前半は琴ちゃんと優羽ちゃんに会いに堂本の家へ遊びに行って

六月に行われる結婚のお披露目式の話で盛り上がったり

工事中の理樹さんと琴ちゃんの新居をヘルメットを被って見せてもらったり

女子会と称してまるちぃのマンションへ集合したりと

これまでの人生の中で一番“遊んだ”



後半は一転

大ちゃんとダム湖畔の別荘で過ごすという落ち着いたものになった




初めてできた女友達と




ほんの数ヶ月前までは想像もつかなかった未来を歩んでいて


毎日、毎日幸せだと実感する



そんな楽しい夏休みは
一生の宝物になった



そして・・・




気がつけば制服は長袖に変化して
景色はセピア色へと変化してきた




二学期






私の人生の




忘れられない季節が始まった








□□□







「「おはよう」」


「「はよ」」




いつもの教室のいつもの席


編入した日が懐かしいと思えるくらい

この教室にも馴染んできた


卒業アルバムの写真に収まったり
下級生主催の追い出し会に参加したり

其々が
“卒業”を意識し始めた



『三学期は進学組と補習組以外は自由登校だよ』


そう大ちゃんから聞かされたは昨日のこと

まだまだ続くと思っていた日々に限りが近づいていると知って
急に切なさが込み上げてきた


それでも・・・
もう二度と会えない訳じゃないと
気持ちを切り替えていたものの

大ちゃんには全部バレていたようで


お気に入りのカメラを持って来て
シャッター音を響かせるようになった

そのカメラは三つあって

撮った写真を直ぐに確認できる新しいカメラと
フィルムを入れるタイプ二つ

それを首から下げては
雰囲気に合わせて持ち替える様は本格的

私は、というと
大ちゃんの首が心配になる

だってカメラ三つだよ?
重そうだから首が折れそうでしょ

でも・・・
嬉しそうにカメラを構える大ちゃんを見てると

口が裂けても言えない


だから


「無理しないでね」

って言うくらいが精一杯

そんな私に


「カメラは気にせず
いつも通りで良いからね」


大ちゃんは必ずそう声を掛ける


意識して表情が硬いより
良い写真が撮れるらしい



・・・うん。噛み合ってない


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