蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜



「蓮っ」



そんな緩〜い時間は残念ながら来なくて


お昼休みが終わる予鈴とともに
大ちゃんが呼びに来てしまった


「大ちゃん」


第二保健室からやってきた先頭に居た大ちゃんへと駆け寄った


「ん?」


見上げた大ちゃんの視線は
少し眉間に皺を寄せて探るように揺れている


何かあったのだろうか?

心配になったところで


「蓮、泣いたのか?」


少し低い大ちゃんの声が降って来た


「・・・え」


予想していなかったことに目を見開く


・・・泣いた?


驚く私の背後から


「泣いたんじゃなくて、蓮は欠伸のし過ぎよ」


優羽ちゃんの呆れた声がした


「そうか」
「あ〜」


ホッとしたように眉を下げた大ちゃんの表情は
いつもの優しいものに変わっていて

欠伸で少し濡れた睫毛に気づいてくれたことに頬が緩む


「眠いの?」


大きな手が頭を撫でるから
気持ちよくて目を閉じる


「ここって催眠効果があるみたいでしょ?」


一見無機質な白い壁に特有の香り
それなのに
陽だまりのような暖かみを感じられるのが不思議


「お昼寝会も良いかも」


ボソッと聞こえた優羽ちゃんの声に


「あ゛?」


即座に反応する亜樹の様子に
クスクスと笑いが起こった


「今日は真っ直ぐ帰ってゆっくりしよう」


大ちゃんの提案に皆んなも頷いた





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