蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


初めて寝坊で遅刻をした日


あんなに寝たにもかかわらず
欠伸と戦っていた


「蓮、目が真っ赤」


優羽ちゃんの可愛い手鏡で見た自分の目は
大泣きした後みたいに真っ赤だった


「まるちぃの言ってた過眠症かもよ?
病院で診てもらった方が良くない?」


琴ちゃんと優羽ちゃんと瑛美ちゃんは
欠伸連発の私を最初は笑っていたけれど

お昼が近づく頃には
心配顔に変化していた


「大和の所為?」


優羽ちゃんの視線が私を通り越した後ろの席に向けられて

焦って否定した


昨日は・・・

お風呂上がりに大ちゃんが髪を乾かしてくれている間に
コクリコクリと筏を漕いでいた私が

次に気付いたのは朝だったから
大ちゃんの所為ではない


「続くようなら診てもらおう」


後ろから大ちゃんの声が聞こえたと同時に
頭の上に大きな手が乗った

やっぱり大ちゃんの手はホッとする

小さく頷くと三人はホッとしたように笑った



□□□



秋も深まって絶好のお昼寝日和


簡単に考えていた眠気は


覚める気配を見せないまま
連日のように遅刻するまでになり


「春と秋は眠いのよね〜」


飛鳥さんは遅めの朝食を並べながら
落ち込む私を励ましてくれた


・・・過眠症かな?


軽く考えていたことなのに
今では頭の中の大部分を占めていて

毎日不安しかない

そんな私を


「今日は私と出かけようね」


飛鳥さんは外へと連れ出してくれた


いつもは大ちゃんの座る右側に飛鳥さん
運転席には青木さんと助手席は和哉さん


そして・・・
着いた場所に驚いたところで

人差し指を唇に当てた飛鳥さんは
「シー」と小声で囁いて

私の右耳からピアスを外した


「・・・?」


「(私も)」

そう唇が動いた後で髪を耳にかけた飛鳥さんの右たぶからは
いつも着いているピアスが外されていた













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