蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜



「大ちゃん、ありがとう」


「どういたしまして」


感動の再会の後で
コタを連れて東屋へとやって来た

此処からの眺めは広いお庭と絵本の中のお城みたいなお家の全てが見えるから素敵


「あれからハスの花って咲いてる?」


「うん、毎年ね」


「そう言えば豊田さんは?」

六年前に居たお庭番のような豊田さん


「今でも居るよ、そのうち会えるさ」


「楽しみ」


視線を動かせばお庭の至る所に護衛らしき組員さんが立っていて

護られていることを想う


「蓮、これ」


「・・・これ、どうしたの?」


大ちゃんが持っているのは
白いスマートフォンで


「持ってないと不便だから」


そう言って持たせてくれた


「ありがとう」


「俺のと色違いだから、困ったら
教えてあげられるからね」


「うん」


初めて持つスマートフォンは
綺麗で少し重く感じる

小学生の頃に持っていた子供用携帯とは格好良さが違う


「中に、俺と必要な人の連絡先は入れたからね」


「ありがとう」


「そこにもう一人」

大ちゃんはそう言うと
指を器用にスライドさせて画面を開いた


そこに表示されていたのは


[山野香衣]の名前だった


「えっ」


「お友達でしょ?」


「どうして?」


「荷物を取りに行った時に連絡先のメモを預かったから」


「大ちゃん、ありがとう」


「どういたしまして
早速電話の仕方とメッセージの入力方法をスパルタで教えるね」


「スパルタ?」


「その方が早く覚えるでしょ?」


向日葵のようなキラキラしたした笑顔の中に黒いものが見える気がするのは気の所為だろうか?


「そう、かな?」


「そうだよ」


「お手柔らかにお願いします」


「承知しました」



そうして、部屋に戻ってから
スパルタと言う名の甘い甘いレッスンに


「・・・んんっ、ぁ・・・ふ」


息も絶え絶えになりながら
漸く覚えた使い方で


香衣にメッセージが送れたのは
夕食も終わった後のベッドの上だった



ねぇ、誰か・・・
キスってスパルタかどうか知ってる人いる?














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