蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


「・・・・・・え」


降り立ったのは駅裏のオフィス街の入り口にあるビルの前


[MKコーポレーション]

ピカピカの社名が張り付いた建物を見上げると


あまりの高さに目眩がした


「大丈夫?」


「・・・うん、平気」


和哉さんの先導で二回自動ドアを潜ると
広いエントランスに息を飲む


丁度正面にあるカウンターの中から綺麗な受付嬢が一人出てきて

大ちゃんの前で綺麗なお辞儀をした


「社長から伺っております
こちらへどうぞ」


綺麗な手が指し示した先には
三基のエレベーターが見えた


「ここからは自分が」と
案内を断った和哉さんに

一瞬顔を歪めた受付嬢は
また大ちゃんに向かって体制を変えると


「いってらっしゃいませ」


綺麗なお辞儀をした

そしてチラッとこちらを見た視線の強さに肩が震えた


「さぁ、行こう」


それが直る前に私の肩を抱いて歩き始めた大ちゃん

受付嬢の表情は気になったけれど
振り返る勇気なんてなくて諦めた

でも・・・

私たちの背後で彼女が私を睨んでいたなんて・・・

和哉さんと大ちゃんに守られている私は気づかなかった



・・・



三機あるエレベーターの真ん中は
上層階専用らしく
迷いもなく最上階を選んだ和哉さんは

何度も此処へ来たことがあるだなって思った


到着したフロアはシンとしていて

三人で廊下を少し歩いて
セキュリティがかかる扉を抜けた


その先に、またエレベーターの扉


「親父の所へは直接行けない仕組み」


疑問に思う私を見透かすように
大ちゃんは答えをくれた


そうして到着した先に


「いらっしゃい」


穏やかな表情をした瑞歩さんが居た


瑞歩さんにいつも付いている綾瀬賢士《あやせけんし》さんに促されて

ソファに大ちゃんと並んで座ると
和哉さんは大ちゃんの斜め後ろに下がった




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