蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


パソコンで仕事をしている瑞歩さんを待つ間に綾瀬さんが紅茶をいれてくれた


「ありがとうございます」

小声でお礼を言うと
「いいえ」と柔らかな笑みが返ってきた


大ちゃんの周りは穏やかな人が多い

それが嬉しくて隣に座る大ちゃんを盗み見ると
同じように微笑んだ大ちゃんと目が合った


「皆んな蓮の味方だよ」


いつか聞いた言葉を何度も使う大ちゃんは

やっぱり私のことを一番理解してくれていて嬉しい気持ちになった


「さぁ、お待たせ」


瑞歩さんは向かい側に座って
綾瀬さんがパンフレットを開いた


・・・えっと、なんだろう?


頭の中に生まれるハテナを
テーブルの脇に座った綾瀬さんが止めた


「これは、二ノ組のフロント企業のパンフレットです
蓮さんが入院中に姐さんが説明したと思うんですが、良い機会ですので補足させて頂こうとお越し頂きました」


「・・・はい」


飛鳥さんから聞いた話が不十分だったことが何故分かったんだろう

若干疑問に思ったけれど
綾瀬さんの話に頷いた


「郡の家には二つの仕事があります
一つ目はこのパンフレットにあるMKコーポレーション、企業向け、セキュリティシステムの開発販売と、不動産関係を取扱う会社に飲食店の経営です。
若、大和さんも一年後には此処で社長と共に働くことになります

二つ目は二ノ組、郡夜組
白夜会に属してはいますが
情報を司るのが仕事なので基本的に表へ出張るようなことはありません
なので、表か裏かで言えば表
ただ、何かあれば陰として一ノ組を支える要になります
最近では情報システムを駆使して状況を判断したり内部事情を詳らかにすることが出来ますが
それが無い時代は“目”と呼ばれる情報収集担当が至る所に配置されていました。今でも目の力はニノ組の原動力で
蓮さんの家は代々目として郡夜に貢献してくださっています」


飛鳥さんが話してくれたのが幹だとすれば
綾瀬さんの話は枝葉のように詳細だった









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