蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜
予習



瑞歩さんの会社を出てから
ショッピングモールで買い物をした

それは、食材から下着や服に至るまでもの凄い量で
何度も和哉さんと突然現れる青木さんが車へと荷物を運んでいた


「蓮は欲しいものはない?」


「沢山買ってもらったから大丈夫」


「欲がないなぁ」


手を繋いでする買い物は楽しくて
「デートみたいだね」ってこっそりと言えば


「デートだよ」って甘く答えてくれた


大ちゃんだけ見ていれば大丈夫なんだけれど

少しでも視線を移せば
遠巻きに囲んでいる女の子達が凄い形相をしていて気分が下がる


綾瀬さんが『縁談が持ち込まれてる』って言ってた通り

大ちゃんは優良物件だと思うから余計にだと思う


「蓮?」


「あ、ごめん、なんだっけ?」


大ちゃんがせっかく『デートだよ』って言ってくれたのに

余計なことを考えているなんて失礼過ぎる

そう思って
少し頭を振って切り替えたのに

立ち止まって顔を覗き込んだ大ちゃんの目は少し揺れていて
私の心が不安定なのを読んでいるかのよう

それを誤魔化すようにニッコリ笑って


「お腹空いたね」って言えば


「あぁ、そうだね」と笑った大ちゃんは


また「和哉」と名前を呼んだ


「承知」


テレパシーでも使えるんだろうかって不思議に思うくらい

二人の間に言葉はなくて

でも、方向転換した大ちゃんと背中を向けた和哉さんは

分かっているかのように離れてしまった


「大ちゃん?」


「あ、あぁ、和哉は地下に用事があるから
蓮と俺は先に車で待つことにしよう」


そう言う大ちゃんに
モールの外へと連れ出された




・・・



暫くして戻ってきた和哉さんの両手には
美味しそうな匂いのする袋が下げられていた



やっぱりテレパシー?



かな?





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