蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜
転校生



大ちゃんの部屋に届いた大きな箱


「開けてみて」


嬉しそうな大ちゃんの声に
留め具を外して蓋を開けた


「制服?」


「そうだよ」


同じチェックのリボンとスカート
まるでアイドルの衣装のような可愛い制服に息を飲む


「どうしたの?」


ソファに座っていたはずなのに
いつの間に隣にいたのか

間近で聞こえた大ちゃんの声に驚いた


「ううん、なんでもない」


似合わないと思ったけど
用意してくれた制服だから頑張って着なきゃと思い直した


「蓮がこれを着たら
またスカウトされちゃうね」


「・・・あ」


小学生の頃、よく出掛けた先で
『連絡待ってるからね』と名刺を渡されたことがあった

小学生向けの雑誌だったから
私が子供っぽかった所為だと思うけど


「高校生だよ?流石にないよ」


そう言えば


「蓮は何も分かってないね」


大ちゃんはまたハァとため息を吐いた後で


「まさか子供の頃だけの話だと思ってないよね?
蓮は自分の容姿をもっと自覚した方がいいよ
俺は蓮が連れ去られそうでヒヤヒヤする」


眉を下げた


「・・・んと」


こういう時はなんて答えるのが正解だろうか

東美の時は褒める=お世辞と教わったから難しい


「善処します」


大ちゃんを見ずに模範解答を出せば


「・・・ブッ、まぁ良いよ」


盛大に吹き出された


「制服は二セットあるからね
靴は玄関に並べておいたし
教科書は要らないけど指定の鞄とか
必要な物は全部揃ってる」


「ありがとう」


「どういたしまして」


六月一日から通う東白学園

夏服への衣替えだからと用意された夏服

事前予習で学園の映像も見せて貰っているから

そこに不安はないけれど

これまで
香衣以外に女の子の友達がいなかった私の難関は

お友達作りかもしれない



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