蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


「迎えにきたよ」


突然奥の間の扉が開いて
大ちゃんが顔を出した


「大ちゃん」


うれしくて立ち上がると

大ちゃんの手が「泣いた?」と頬に触れた

それを見ていた琴ちゃんが


「ラブラブ」って
両手で頬を挟んで照れているから

私にもそれが感染る


「蓮、やだ真っ赤じゃない」


優羽ちゃんに揶揄われて
その頬を隠したくて飛び込むように大ちゃんの腕の中に収まった


「「「ご馳走様〜」」」


背後からハモった三人の声に

頭の上から大ちゃんの笑い声が降る


「・・・恥ずかしい」


自分で飛び込んだ癖に
大ちゃんの所為にした


「優羽、行くぞ」


大ちゃんの向こう側から亜樹の声がして


「は〜い」

それに応えた優羽ちゃん


「お昼は食堂な」


大ちゃんに手を引かれて生徒会室を出ると

前の廊下に沢山の男子生徒が並んでいて驚いた


「・・・?」


「Nightの面子だ、お昼は皆んな食堂だからな」


よく分からないまま大名行列のようにゾロゾロと大勢で食堂へと移動した


「永遠は?」


「永遠は四時間目に食べてる」


「・・・?・・・そうなんだ」


「蓮、食べ終わったら
まるちぃのところね」


「・・・はい」


暗号のような優羽ちゃんの誘いにも乗って
初めての食堂に視線が落ち着かない

東美と違って彼方此方で楽しそうなお喋りが続く此処は

異空間に彷徨い込んだよう

ただ・・・

私の周りには知ってる人達が居て
それを更にNightの子達が囲んでいて


そのことをよく思っていない視線から遠ざけてもらっていることを


 
知らないでいた



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