蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜



「「「まるちぃ」」」



亜樹と大ちゃん
私と琴ちゃんと優羽ちゃんと瑛美ちゃんで

食堂の帰りに保健室へとやって来た

入って早々に“まるちぃ”と声を上げた女子三人

その答えは・・・


「チッ」


既に保健室の中に居た不機嫌の永遠が説明してくれた


「俺の婚約者の森谷千色、学園では
『丸山千色』ってことになってる
琴ちゃん達の呼び名は
ここから捩ったものだな」


「はじめまして山之内蓮です」


引っ詰め髪に大きな黒縁眼鏡
シンプルなブラウスに濃紺の膝丈スカート
白衣を羽織った人が六歳年上の永遠の婚約者さん

恐ろしくダサい風貌だけれど
色白の肌に大きな瞳
小ぶりな唇は桜桃のようで可愛いさを隠しきれていない

大ちゃんの予習にあった写真は二枚
その内の一枚目の姿と対面したけれど


「変装ってバレますね」


思ったことが口から出た


「だよね〜。うちらもすぐ分かったもん」


優羽ちゃんも変装だと分かったらしい


「森谷千色こと『まるちぃ』です
蓮ちゃんもよかったらそう呼んでね」


フワリと微笑んでくれたまるちぃは
永遠を見上げて目を細めた


二人が並ぶと歳の差なんて感じない
寧ろ甘い二人にこっちが赤面しそう


「蓮、おいで」


大ちゃんに呼ばれて近づくと


「今月、俺たちの婚約が通達で回る」


大ちゃんは他の皆んなに向けてそう言った


「そうなの?おめでとう」
「「「おめでとう」」」

反応して言葉をくれたのは女子四人で

亜樹と永遠は知ってると言わんばかりに頷いた








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