蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


「入学して間もなく琴が入院した時にね
教室で一人だった私に声をかけてくれたのが瑛美だったの・・・」


そう始めた優羽ちゃんは


五人兄妹の長女の瑛美ちゃんの優秀且つ家族思いの話を
ザックリと聞かせてくれた



お母さんの再婚で東白学園に進路変更になった琴ちゃんに合わせた優羽ちゃん

琴ちゃんが居ないだけで一人なんて
自分の小学生の頃を思い出す

私は望んで大ちゃん達と一緒に居たけれど
優羽ちゃんは他の生徒から一線を引かれることを知っていたのだろうかと思うと胸が痛くなった

でも、二人の仲の良さを見れば
それも乗り越えての今がある

親友と呼べる相手がいることを羨ましいなと素直に思えた

空想にふける私に視線が集まっていて
慌てて話を戻す


「学年順位が三位以内で週五バイトが信じられません」


「よね〜」


琴ちゃんが一緒に頷いてくれたのに


「案外難しいことじゃないけどね」


瑛美ちゃんはサラッと流した


「ま、もう三年生の就職組だから
三位以内って縛りもないの
ここからは履歴書を上手に書く方が優先〜」


瑛美ちゃんはそう言うとガッツポーズをした


「応援していますね」


「ありがと〜」


白夜会絡みの人達と自然に絡むことができる瑛美ちゃん

優羽ちゃんが「面白い子でしょ」って言った通りだと思うけれど

それより中身を見てくれる素敵な人だとも思った


お昼休みが終わる頃に迎えに来てくれた大ちゃん達と第二保健室へと行くことになった


「私は奥の間〜」


そう言って手を振った瑛美ちゃんは背中を向けた

理樹さんが作ったという第二保健室へは瑛美ちゃんは入れないのだろうか

浮かんだ疑問は


「ちゃんと入れるんだけどね
一度も来たことはないね・・・
彼女なりの遠慮じゃないかな?」


大ちゃんが解決してくれた


そうして転校初日は
奥の間と食堂と保健室で過ごし

教室へ戻ることは無かった



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