蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜
不穏な影



東白学園へ転校してから
少しずつ馴染んできた中旬


朝のHRで
「今年も学園祭があります
今月末までにはクラスの出し物を決めて準備に取り掛かりたいと思います」


瑛美ちゃんから発表があった


「学園祭?」


後ろの席を振り返った私に


「そう、東白祭だよ」


大ちゃんは一日限定の学園祭の話をしてくれた


「東美では無かったから楽しみ」


そう言った私の頭は
やっぱり大ちゃんに撫でられていた


東美では学園祭も運動会も無かった
だから経験することもないかと思っていたイベントにテンションが上がる


「今まで何をしたの?」


興味津々の私に


「一年はお化け屋敷、二年はクレープ屋だったかな」


興味も無さそうに答えた大ちゃん


「なんのお化け?」


大ちゃんがお化けなんて綺麗で怖いに決まってる
そんなことを思って聞いたのに


「どっちも出てないからね」


渋い顔しか返ってこなかった


「・・・?」


疑問に頭を傾げたところで


「蓮、その話はまた話すから
今日の帰りの予定立てよう」


優羽ちゃんから声がかかって前を向いた


「うん」


“ちゃん付け”はなかなか取れないけれど
敬語を使わない努力は身を結んできた


「見て〜」


そう言って琴ちゃんが取り出したのは


「「「ワァ」」」


ホテルのスウィーツ食べ放題のチケット五枚


「理樹が皆んなで行っといでって」


嬉しそうに話す琴ちゃんに釣られて
皆んな笑顔になった


「まるちぃも誘ってるからね」


「楽しみ〜」


さっきまでの学園祭のことなんて
スッポリ頭から抜け落ちて


120分と書かれたチケットに
皆んなの視線が集まっていた






< 96 / 160 >

この作品をシェア

pagetop