蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


ーーー放課後


女子五人で・・・とはいかず


理樹さんの車に乗せられた女子五人は
静か〜にホテルに到着した


てか、リムジンって生まれて初めて乗ったんですけどっ

心の中では盛大に長い車に突っ込んで


「ありがとうございました」


表面上には出さず
理樹さんに丁寧にお辞儀をして

琴ちゃんを片時も離さない理樹さんと

その他四名は上原さんとホテルの支配人に誘導されて
上層階のレストランへと移動した


「終わる頃に戻って来るから」


支配人とフロア長にそう告げると
名残り惜しそうに琴ちゃんから手を離した理樹さんは、上原さんと行ってしまった


「理樹さんを久しぶりに見たけど
あんなに甘い顔は初めて見たよ」


六年前の記憶を思い出す


「え?そうなの?周りには聞くけど
私の前ではいつも同じだからね〜」


首を傾げた琴ちゃんは
やっぱり可愛くて

あのブリザードしか出さない雰囲気の理樹さんが変化したのも頷けた


「こちらへ」
と誘導されたのは


「「「「「綺麗」」」」」


眺望の良い個室だった


そこから時間を忘れて
スウィーツとお喋りにハマっていく


「残り三十分程になります」


そう声がかかった時


「私、お手洗いに行ってくる」


と立ち上がった瑛美ちゃんに合わせて
私も一緒に行くことにした


お手洗いを済ませると
瑛美ちゃんの姿がパウダールームに見えたから足を進める


鏡に向かう瑛美ちゃんの横顔と
沢山の鏡が重なり本来見えるはずのない向こう側が映った瞬間息を飲んだ


・・・大きな青痣


それはほんの一瞬で
瑛美ちゃんが袖口を直した時には見えなくなっていた


「あ、蓮も直す?」


「・・・ううん、私は大丈夫」


「そう?じゃあ戻ろう」


いつもの笑顔の瑛美ちゃんと連れ立って歩く


夏服に衣替えをしたはずなのに
『日焼けしたくないの』と瑛美ちゃんは長袖ブラウスを着続けている

その原因は・・・あの痣?

考え込むうちに頭の中は悪い方へしか考えられなくて


女の子の友達が居なかった私は
聞いていいものかどうかの判断さえできずにいた












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