蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜



結局・・・
瑛美ちゃんに聞くことも
まして、大ちゃんに聞くこともできないまま

モヤモヤが広がっていたある日


それはもう突然にやってきた


食堂から保健室への道中で
お手洗いに寄ることになった


大ちゃん達も隣だから大丈夫だろうと
男女で別れたまでは良かったんだけど


瑛美ちゃんの携帯が短く着信を告げて
それに反応した瑛美ちゃんは


「ちょっと奥の間に忘れ物」と
走って行ってしまった


それがもの凄く不自然で気になる

優羽ちゃんと琴ちゃんは
トイレに入ってしまった後で

声をかけることができない


悩むより先に足は動いていて


瑛美ちゃんが向かったであろう生徒会室へと駆け出した


いつもは大ちゃん達と一緒にいる私が
一人で駆けている様子が珍しいのか

大勢の生徒の視線を集める

そんなことより瑛美ちゃんのことが心配で

迷うことなく生徒会室の扉を開いた


「・・・ん?」


そこには瑛美ちゃんの姿はなかった


奥の間から僅かに声が聞こえる


コンコン「瑛美ちゃん?」


恐る恐るノックすると


「蓮、来ちゃダメっ」


大きな瑛美ちゃんの声が聞こえた


「え?」


なんだろうと思う間もなくガチャと開いた扉から

怖い顔をした女子生徒が顔を出して
私の腕を引っ張って中へと引き入れた


「キャ」


そのまま突き飛ばされて床に転がる

そこには同じように床に座る瑛美ちゃんがいた


「瑛美ちゃん」


声を掛けた私に瑛美ちゃんは眉だけを下げて見せた後で


「この子は関係ないから帰してあげてください」


立ったままの女子生徒に向かって声を上げた













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