無名ファイル1

200mを通過したとき背後に、

ぴったりとくっついて走る人が、

いるのに気がついた…。

殺気が…背中に迫ってくる…!!

あの子だ…真由さんだっ!!!

追い付かれたら…殺される!!!

「きゃぁぁぁあっ!!!」

「ぐぇっ!!」

『どしゃーん!!!』

甘い声が背中に降ってくる…。

声援がぴったりと止み、

随分後ろにいたリレーの大群が、

あたしを次々と追い抜いた。

最初、何が起こったのか理解できず、

あたしの中の時が止まった。

「きゃっ、月乃さん!大丈夫?」

大丈夫~?じゃねぇよ!降りろよ!!

あたしの背中に跨がったまま謝るな!!

大群は、残り600m地点を通過していた。

「月乃さん、立てる??平気?」

まだギリ間に合うか!?

「お気になさらず!!」

もうスッ転んだのが恥ずかしくて、

痛いとかそれどころじゃない!!

「は!?ちょ!!」

あたしは真由さんを置いて走り出した。

大群の背中にじわじわと近づく。

あと少し、あと50m…もうちょっと…!!

『ゴール!!!』

結果は3位。まぁ、7クラス中だし…。

生徒達の歓声は止まらなかった。
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