無名ファイル1

無言のまま廊下を歩く女子二人。

「…さっきはごめんね?」

沈黙を破ったのは意外にも真由さん。

あたしは驚いて思わず足を止めた。

「…何?」

「いや、なんでもない」

なんか失礼な事考えてるでしょ?と、

不機嫌そうに頬を膨らませる真由さん。

…案外普通の子、なのかな?

「真由ね、すごく意地っ張りなの。
だからさっき謝れなかった…ごめん。」

「大丈夫だよ、気にしないで」

そういえば男子のリレーの結果は、

一体どうなったんだろうか…。

歓声の盛り上がりが凄い事は分かった。

『コンコン』

「失礼します」

「あら、月乃と…あぁ、栗山さん。
随分カオスな怪我ね…いらっしゃい。」

お色気先生は相変わらず今日も美人。

今日も白衣からは嗅いだことのある、

煙草の匂いが微かに香る…誰かが、

この匂いしてた気がするんだよなぁ…。

「いったぁ!痛い!!先生!!!」

「大丈夫よ、月乃の方が痛いから。」

「ひぇ、先生…そんな事言われたら、
身構えちゃうんですけど!!!」

はぁ…痛かったぁ…。

両膝、両手に擦り傷…深いというより、

浅く広い滲みる系の傷だった…。
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