御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「気にするな、なにも聞こえていないし見てない。有栖川に従事しているなら、そのくらいのわきまえはある」

ギュッと手を握られて、彼の体温が私の心をなだめてくれる。

「私、今度こそ幸せになっていいんですか? ほんとに蓮さんと一緒にいられるんですよね?」

いまだに信じられなくて思わず彼に何度も尋ねてしまう。蓮さんは「当たり前だ」と言って笑ってくれた。

パイロットはいるけれど、今ここにいるのは私と蓮さんの二人きり。誰にも邪魔されない場所で、思う存分愛を語り合える贅沢に身が震える。

「蓮さん、愛してます」

「あぁ、俺もだ」

甘い甘い口づけに身も心も溶かされて朦朧としてくる。やっと愛する人と一緒になれる喜びに、戸惑いさえ覚えた。

「春海、ひとつ約束してくれ」

「……約束?」

「今後、一切の隠し事をしないこと。何かあったらすぐに俺に言ってくれ、必ず君を守るから」

有栖川家に嫁いだ後、蓮さんは分家からの反応を案じている。全力で私を守ろうとしてくれているのがわかって、それだけでも心強い。

蓮さんが用意してくれたウェディングドレスがキラキラと輝いている。それを着て、彼と永遠の愛を誓う自分の姿を想像するだけで胸がいっぱいになった。

「大丈夫ですよ、蓮さんがいてくれるなら。なにがあってもへこたれません。だけど……実はひとつだけ、まだ蓮さんに言ってないことがあるんです」

「なんだ? 教えてくれ」

なにを言われるのかと身構える蓮さんに、私は思わず噴き出しそうになる。

――私のお腹に、蓮さんとの子が宿ったらしいです。

そう伝えたとき、蓮さんはどんな反応をするだろう。きっと喜んでくれるはず。だって、私たちが愛し合った証だから。

「蓮さん、あのね……実は――」
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