御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
有栖川コーポレーションの統括部長が直々に謝罪なんて恐れ多い! しかも御曹司!

『昨日はうっかりして肝心の連絡先を交換するのを忘れていた。後になってから思い出してさ、直接会社に連絡するしかなかったんだ』

自分のことを気にかけてくれたことが嬉しくて、今にもデスクの下の足がジタバタと動き出しそうになるのをぐっと押さえつける。

『まだ仕事中?』

「いえ、もう終わって帰ろうとしてたところです」

『そうか、それならよかった。よければこれから食事に行かないか?』

蓮さんから思わぬ食事のお誘いに目が点になる。

『やっぱりいきなり過ぎだよな……もし予定があるなら改め――』

「いえ、予定なんてないですっ」

仕事が終わって帰りがけにコンビニ弁当でも買って、いつものようにどうせしがない夜のひとときをひとり寂しく過ごすだけだったし、まさかまた会いたいと思っていた人から食事に誘われるなんて……ここで断る理由は一切なにもない。

『じゃあ、五十四階のロビーで待ってる』

「はい。わかりました」

静かに受話器を置くと、声にならない奇声をあげそうになるのを堪えて唇を震わせる。

蓮さんとデート! って思っていいのかな? いや、向こうはそういうつもりじゃないかもしれないし……。

とにかく急がなきゃ!
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