御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「こりゃ重症だわ」

あんなイケメン御曹司に求婚されて、どうしたらいい?なんて贅沢な悩みなのかもしれない。ひとりで百面相している私を見て絵里さんが呆れている。

「まぁ、付き合ったことがなくったって、お互いのインスピレーションよ。この人だ! っていうね。もう、ボケッとしてないで仕事仕事!」

インスピレーション……かぁ。

蓮さんと初めて会ったとき、確かに素敵な人だとは思った。けれど、彼が有栖川家の人だと知って、見えない壁の隔たりを感じた。それに、今、私はどうしようもなく貧乏な生活をしている。あんなボロいアパートに住んでるなんて知られたくなくて、昨日は蓮さんの秘書が運転する高級車でわざわざ送ってもらったというのに、近所の公園で降ろしてもらった。

蓮さんはそれでも『いきなり女性の家の前までっていうのも不躾だからな』と納得してくれたけど……蓮さんの好意を無にしてるみたいでなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

連絡先を交換してからというもの、毎日のように彼からメールが来る。男の人って結構こういうマメなこと苦手って人が多いのかと思いきや、蓮さんは違った。元カレはあんまり連絡をくれる人じゃなかったから、気にかけてくれてるのだと思うと嬉しい。

そんなふうに蓮さんのことを考えながら何気なくスマホを手に取ると、メールが一件入っていた。

【仕事が終わったら連絡して欲しい。連れて行きたい店がある】
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