御曹司とのかりそめ婚約事情～一夜を共にしたら、溺愛が加速しました～

なんとか仕事を終え、蓮さんにメールを入れると【ビルのエントランスロビーで待ってる】という返事がすぐに返ってきた。

「すみません、お待たせしました」

ロビーへ着くとすでに蓮さんが待っていた。今日の彼のお召し物は濃い目のトーンのネイビースーツ。サックスブルーのシャツに同系色のネクタイをして、完璧なワントーンコーディネートが完成している。コーディネーターでもいるんじゃないかと思うくらい、蓮さんはいつもスーツをセンスよくお洒落に着こなしていた。

「お疲れ、いつもいきなり呼び出して悪いな」

「いえ、とんでもないです」

俺と結婚してくれないか、と言われてその言葉を意識するとどうしてもギクシャクしてしまう。言った当の本人はまったく変わらず私に微笑みかけているけど。

「秘書に待たせている。あの車に乗って」

ビルを出ると、すぐ正面に昨日送ってもらったときと同じ白い高級車が停まっていて、その前で秘書の緒方さんが私に頭を垂れて恭しく立っていた。