御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「君の口から別の男の名前を聞いた瞬間、今までにないくらいイラついておかしくなりそうだった……これって、完全に嫉妬だよな」

切なげに瞳を揺らし、私の頬を両手で包み込む。真っ直ぐに見つめられ、そして空気が変わった。互いに寄り添うように唇を寄せ、重なる。

「……んっ」

初めて蓮さんとキスしたときよりずっと甘い。熱い吐息が交互に交わされ、そしてキスの勢いですぐ後ろのソファーへ押し倒された。

「君が金で釣られるような女性だなんて思ってない。さっきは、その、確認するようなことを言ってすまなかった」

眉尻を下げ、蓮さんは切なげに睫毛を震わせた。

謝らなきゃいけないのは私のほうなのに、そんな顔しないで欲しい。

「俺に言い寄ってきた女性はすべて有栖川の資産目的だった。けど、Bisで食事をしたとき俺に『有栖川家だろうが蓮さんは蓮さんだ』って言ってくれただろ? その言葉で俺はようやく有栖川蓮として呼吸ができるようになったんだ。一個人として見てくれた女性は……君だけだ」

あぁ、そうか……だからあのとき蓮さん、嬉しそうな顔をしてたんだね。
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